どのような検査か
特定建築物(特殊建築物)調査は、建築基準法12条によって定められる定期報告の義務を根拠とする調査です。特定建築物(特殊建築物)として指定された公共性の高い建築物は、利用者の安全のためにも建築物全体が常に適法状態にあることを定期的に報告する必要があり、そのために制度化されたものが特定建築物調査になります。
特定建築物を対象とする定期報告制度全体の説明(建築物調査・建築設備検査・防火設備検査・昇降機等検査)は以下をご覧ください。
なお、2016年6月の建築基準法改正により、建築基準法12条で定期報告が必要となる建築物が「特定建築物」と明記され、今までの「特殊建築物」という呼称から「特定建築物」へと移行しました。
調査対象となる建築物
その名の通り、特定建築物(特殊建築物)として指定された建築物は、調査対象となります。建築物を特定建築物として指定する条件は、その建築物の所在地の特定行政庁によって異なる場合がありますが、参考として東京都の特定建築物の指定条件を参考に掲載しております(下記のリンク参照)。もし厳密な条件について知りたい場合は、特定行政庁の建築指導課に直接問い合わせるか、定期報告業務を受託する調査者に相談してください。
ただし、適マーク制度の申請をする場合には、通常は調査対象建築物でなかった建物でも、必ず建築物調査・報告を行い、その報告書の写しを添付する必要があります。
初回調査の免除と報告年
新築・改築後は、直近の特定建築物調査年度の調査が免除となります(東京都の場合)。建築物の所在地の特定行政庁によって細かなルールが異なるため、初回の免除に関する詳細については、特定行政庁の建築指導課等に直接問い合わせるか、定期報告業務を受託する調査者に相談してください。
初回免除後は、3年毎に定期報告が求められるケースが多くなります。建築物の用途や特定行政庁によっては毎年の場合もありますので確認が必要です。
特定建築物調査の内容
1. 敷地・地盤
地盤や敷地に加えて、塀や擁壁の状態を目視中心に調査します。ひび割れや陥没などの損傷具合、排水が正しく行われているかや、建築基準法施行令によって定められている敷地内の通路が適法状態であるかもチェックします。
2. 建築物の外部
基礎や外壁の状態を目視中心に(必要に応じてテストハンマー等も用いて)調査します。基礎や外壁にひび割れ・沈下等の問題がないかに加えて、広告板や室外機などの設置状態もチェックして事故が起きないようにします。
平成20年の建築基準法改正以降、外壁調査が強化され、打診・赤外線カメラ等による目視よりも詳細な調査が必要となりました。
3. 屋上・屋根
屋上や屋根部分を目視中心に(必要に応じてテストハンマー等も用いて)調査します。屋根や屋上そのものの損傷を調査するとともに、パラペットや笠木、ドレーンを含む排水周りの状態も調査します。
4. 建築物の内部
建築物の内部が、建築基準法にそっているかを目視と建築図面両方から調査する内容が中心となります。防火区画や壁、床、天井などの状態の調査に加えて、火災の際でも耐火性能が確保されているかなどが重要になります。(防火設備に関しては2016年6月から施行された建築基準法の改正により建築防火設備検査が追加され、より調査内容の充実がなされました。)
また2014年に施行の建築基準法改正で追加された「特定天井」についても調査対象となります。
5. 避難施設
廊下・通路・出入り口・バルコニー・階段等や排煙設備など、火災の際の避難に重要な点が建築基準法に適合しているかを、目視と建築図面両方から調査します。
6. その他
避雷設備や煙突など、目視によって調査する場合があります。
報告書の様式
報告書のテンプレートは、建築物の所在地である各特定行政庁のホームページ等からダウンロードして利用します。全体的な様式は国交省の示すガイドライン等にそって統一はされていますが、特定行政庁や委託された一般財団法人は独自の様式を追加している場合が多いため、必ず所在地の各特定行政庁等からダウンロードしたものを利用します。報告書の冒頭には建築物の所有者・管理者・調査資格者等の記入と報告者(所有者または管理者)の記名が必要になります。
調査が可能な資格者
特定建築物調査を行うことができる資格者は、一級建築士、二級建築士、そして指定された講習を受講修了した特定建築物調査員(旧称:特殊建築物等調査資格者)です。
特定建築物調査の定期報告提出先
特定建築物調査対象となっている建築物の所在地を管轄する特定行政庁や、業務を委託された一般財団法人等に提出します。提出先は各特定行政庁によって細かく異なります。