このページの目次
特定天井とは
建築基準法 施行令39条1項では、「地震」「風圧」「衝撃」等によって天井が脱落・落下することがないよう対策を講じることが規定されていました。しかしながら2011年の東日本大震災において、吊り天井等の落下など、天井に関連した被害が多発したことから、天井の脱落・落下対策を強化することを細かく定める法整備が必要となりました。
その結果、平成26年4月1日に建築基準法 施行令39条に第3項が追加される改正が施行され、その中で「特定天井」が定義され、脱落・落下防止の技術的な基準が定められました。
具体的には、「特定天井」とは「日常的に人が利用する場所の高さ6m超、面積は200平方メートル超、質量は2kg/平方メートル超の吊り天井のこと」とされています。
特定天井の技術基準
特定天井等の天井の脱落・落下を防止する技術的な基準が平成26年4月1日の建築基準法改正で追加されました。改正施行後の新築物件における特定天井は、通称「仕様ルート」「計算ルート」「大臣認定ルート」と呼ばれる3つのいずれかの基準をクリアする必要があります。また既存建築物においても「落下防止措置」を設けるよう定められています。
仕様ルート
質量が20kg/㎡以下の場合は、通称「仕様ルート」と呼ばれる基準をクリアしている必要があります。基準内容をまとめると、吊り天井が壁と接する部分にクリアランスを設けて地震等の揺れで吊り天井が揺れた場合でも、壁と衝突して落下することを防ぐとともに、吊り天井を吊る部材に細かく数値的な基準が設けられています。
計算ルート
体育館や高層ビルなど、仕様ルートを適用しにくい場合は、構造計算によって吊り天井の耐震性を検証する必要があります。これを通称「計算ルート」と呼びます。
大臣認定ルート
音楽ホール、その他特殊な建築物、特殊な形状の天井などで、仕様や計算基準が適用しにくい場合は、「時刻歴応答解析」「実験及び数値検証」などによって、特定天井の安全性を検証し、国土交通大臣認定を取得する方法があります。2015年4月13日にはサントリーホールが初の大臣認定ルートをクリアしました。
- 日経アーキテクチュア - サントリーホールが特定天井で初の大臣認定取得
既存建築物の落下防止措置
地震等で大きな衝撃があった場合でも天井が落下しないよう、既存建築物においてもネット・ワイヤー・ロープによって天井を吊るよう対策を講じる必要があります。
「特定天井」は特定建築物調査の調査対象
建築基準法で定められる内容であることから、当然ながら「特定建築物調査」の調査対象となるのは自然の流れといえるでしょう。具体的には「特定建築物調査」の調査項目の「4.建物の内部」「天井」の項目で調査報告されます。基本的に目視によって天井の劣化・損傷を調査します。