法定調査が1度も行われていない建築物の存在
各行政は台帳システムなどをそれぞれ利用することで、所管内の建築物を管理・把握しています。そのようなシステム・データベースを元にして、建築基準法 第12条の定める法定調査の提出状況も管理し、案内や督促を行うことがあります。
しかし、そのようなワークフローが成立せず、新築・改築から10年以上にもわたって1度も調査報告が行われていないという物件も少なくはありません。そのような未調査状態であっても、行政から案内や督促がないからといって、今後も報告が必要ないと判断することは早計です。
建築物で事故が起きた場合のリスク
建築物において火災や事故等が発生した場合、原因究明や再発防止を検討する際に、建築基準法が定めているのにも関わらず、1度も調査報告を実施していないことが発覚した場合、事故・火災の問題点・原因の一つとされるでしょう。所管行政が案内・督促をしなかったから、という弁解は成立しにくいと考えられます。
機関投資家には常識となりつつある法定調査
不動産リートや銀行などの機関投資家が建物の所有者となることが珍しくない昨今、機関投資家は、不動産資産の購入を検討する段階、そして取得後の維持管理においても、建築基準法12条の法定調査が正しく行われているかをほぼ確実にチェックすると言っても過言ではありません。
まずは行政に問い合わせる
もし関係する建築物の法定調査および定期報告状況に問題があると考えられる場合、まず対応方法を所管行政や行政が業務委託している一般財団法人等に問い合わせることをおすすめ致します。もちろん勧められる対応方法は様々となることが考えられますが、確実に早期の法定調査実施・定期報告提出を求められることでしょう。行政によっては、今期が特定建築物調査年(2〜3年毎)に該当しない場合であっても、1回も調査が行われていないことを大きな問題点として捉えて、特例として次の調査年を待たずして即時調査・報告提出を求めるケースもあります。
最後に
国内の半数の建築物において、正しく建築基準法12条の定める調査が実施されていない、という数字も一部で明らかになってきていますが、なにも国や行政は建物の所有者・管理者にわざわざ悪意を持って負担を強いているわけではありません。社会生活における安全・安心を第一に求めるからこそ成立した制度であるわけですから、建物の所有者・管理者は法令順守を再優先する意識を高め、法定調査を正しく実施することが求められます。