建築物省エネ法施行
「建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律」、つまり通称「建築物省エネ法」が平成29年度より施行されますが、それに際して省エネ法届出等に関係する事業者向けの説明会が国土交通省によって開催されています。その説明会の一部についてレポートいたします。
旧省エネ法からの段階的切り替え
「建築物省エネ法」は平成28年から段階的に施行開始されています。この「建築物省エネ法」は旧省エネ法を突然廃止するのではなく、段階的な移行となっています。内容的には旧省エネ法をより強化し、建築物の省エネ対策の実行を強く促すものとなっています。
省エネ法の強化
今まで、省エネ法が適用される建築物については「届出義務」が最大の義務となっていました。つまり新築改築時に省エネ法に関する届出をし、著しく対策が不十分な場合においてのみ、行政からの改善指導がなされるものとなっていました。しかしながら新たな建築物省エネ法は、ある一定規模以上の大規模な非住宅建築物に関しては「届出義務」から「適合義務」へと強化され、建築確認申請時に「適合判定」を得られなければ確認済証が交付されない制度となります。旧省エネ法によって「届出義務」が課されていたそれ以外の建築物においては、今まで通り「届出義務」がありますが、行政からの改善指導内容がより強化されます。ですから、全体的に省エネ法対策が強化されたと言えます。
また、建築物の省エネ対策を算出する計算値についても、建築物省エネ法ではクリアすべき基準値が厳しくなっていることからも、省エネ対策が強化されていることがわかります。
旧省エネ法の廃止
今まで施行されてきた省エネ法は平成28年度末をもって廃止されます。それに伴って、修繕や模様替え・設備改修の際の省エネ法に基づく届出と、省エネ法の維持保全を確認する定期報告制度が廃止されます。
登録省エネ判定機関と登録省エネ評価機関
大規模非住宅建築物の新築・改築における省エネ法届出は、所管行政庁か登録省エネ判定機関に届け出る必要があります。この「登録省エネ判定機関」とよく似た機関として「登録省エネ評価機関」というものがありますが、こちらは役割が異なります。新築・改築における省エネ法の届出は、一般的な設備等の省エネ値を利用して算出し判定をしますが、そのような一般的な評価基準では評価しきれない特殊な建築物(新技術による省エネ設備を利用した建築物など)というものが少数ながら存在することを想定し、そのようなイレギュラーな建築物の省エネ判定を判断する機関が、「登録省エネ評価機関」となります。この「登録省エネ評価機関」によって適合として判断される場合は、大臣認定の適合とされ、一般的な「登録省エネ判定機関」によって交付される「適合」と同等の評価となります。
増改築建築物の省エネ法対象
省エネ法において「大規模」な非住宅建築物とされる閾値は2000平方メートルとなっています。この閾値を超えるかどうかの判断の際に、非居室(駐車場など)や開放性のある空間(屋外施設)は除外した面積で判断することになります。その他にも、文化財や仮設建築物なども除外対象となります。
また非住宅建築物を大規模な増改築をした際に、新旧の建築面積を合計した値が大規模非住宅建築物の閾値を越え、かつ増築面積が全体の2分の1以上の場合、その建物は「大規模」な非住宅建築物として省エネ法を適用する対象となります。
建築物省エネ法の開始タイミング
建築物省エネ法の施行日以降の建築確認申請の新築・改築については、建築物省エネ法の適合対象となります。しかしながら、旧省エネ法に基づく届出が新たな建築物省エネ法施行日よりも前に済んでいるプロジェクトについては、確認申請が建築物省エネ法の施行日以降であっても、旧省エネ法の管轄内となります。