定期報告制度に大きな変更
平成28年 2016年6月1日施行の建築基準法改正は、定期報告制度にとって大きく変更が加わる内容でした。新たに防火設備検査が新設されたことは、その対応方法を含めて建築物の維持管理における様々な立場に少なからず影響があったことでしょう。
定期報告の対象建築物の変更
今まで定期報告を必要とする建築物は各特定行政庁が指定していましたが、今回の改正により建築物の維持保全が重要な用途の建築物に関しては、政令によって全国一律で指定するものとし、その他細かな条件を特定行政庁が追加する形に変更となりました。新たに報告対象となる建築物もありますが、大規模な影響はないものと思われます。
防火設備検査の追加
今まで防火設備に関しては、建築物調査内に防火設備に関係する調査項目があり、また消防法に基づく消防用設備等点検によって煙感知器、熱感知器等の消防設備の検査を行う法制度となっていました。しかし、新たに建築基準法に基づく防火設備検査が追加されたことにより、煙感知器、熱感知器、防火・防煙シャッター、防火扉、建築基準法の定める防火区画の適法性など、より防火対策をチェックする定期報告制度の確立を目指すものとなりました。そして防火設備検査の新設に伴い防火設備検査員の検査資格が新設されました。
特殊建築物から特定建築物へ
定期報告が必要となる建築物は国土交通省の省令・ガイドライン等によって「特殊建築物等」と呼ばれており現在でも定着していますが、定期報告制度を定める建築基準法12条内にて、定期報告が必要な建築物が「特定建築物」と明記されました。
定期報告制度の講習資格の変更
定期報告の講習資格者に防火設備検査員が追加されましたが、加えて特殊建築物等調査資格者は特定建築物調査員、建築設備検査資格者は建築設備検査員は、昇降機検査資格者は昇降機等検査員へと変更されました。これは単なる名称の変更ではなく、制度自体の大きな変更となっています。つまり今までの講習資格は国土交通省による省令によって定められていましたが、今回の改正によって建築基準法12条に調査資格・検査資格が明記されたことによって、不正行為等に対する処分が可能になるなどの法的な整備が行われました。
今後について
2016年6月より改正が施行されたものの、防火設備検査については経過措置期間が定められ、各都道府県特定行政庁ごとに差異がありますが、概ね平成30から31年以降から毎年報告を行う体制が整うものと思われます。